改正弁護士法以降、弁護士の新しい働き方として注目されているインハウスロイヤー。ビジネスの第一線で働く面白さや、具体的な業務内容、今後の展望等を通じて、インハウスで働く魅力や醍醐味を紹介していきます。
1999年10月にアフラックへ入社し、以来、組織内弁護士として活動を続けている芦原一郎氏。2006年11月から、その取り組みを伝えるべく、雑誌「NBL」(商事法務 刊)での連載も開始しているので、目にされた方も多いのではないだろうか。
芦原氏は司法修習終了後、森綜合法律事務所(現:森・濱田松本法律事務所)に入所し、企業法務全般と、訴訟・金融・民暴・労務人事などの案件に携わりながら、4年半勤務した。
「ある日、ヘッドハンターから電話があって『インハウスに興味はあるか』と聞かれました。その時は、正直戸惑いました。というのも、『どこそこの会社に組織内弁護士がいるらしい』という話を聞くことはあっても、実際にお会いしたことはなく、案件で一緒になったこともなかったからです。当時、組織内弁護士が何たるかを知らない私が抱いていたそのイメージは『法律事務所のパートナー争いに敗れ、企業内に活路を見出す』という、ネガティブなものでしたから」
当初は興味本位で、紹介先であるアフラックとの面談に赴いた。「私を面接してくれたのは、当時の法律顧問(現:日本における代表者・副会長)のチャールズ・レイクでした。彼はアメリカの弁護士で、米国通商代表部日本部長の経験もありました。彼はその時、日本のアフラックをアメリカ型、つまりコンプライアンス重視型の組織に変えるというミッションを持っていました。彼に言われたのは『英語が話せる弁護士ではなく、日本の法律を肌で知っている弁護士が欲しい』ということ。その弁護士と共に、日本の会社を変えていきたいといわれました。私はまずチャールズ・レイクに興味を持ち、この人となら何か新しいことができるのではないかと考え、転職を決意しました」
その時、一点だけ懸念したのは、収入面だったという。
「法律事務所のパートナーや、自ら事務所を設立することと比較すれば、『毎日仕事がある』という精神面の安定は図れても、収入・給与の大きな伸びは、それほど期待できないだろうという思いはありました。ただ現実には、自営やパートナー弁護士の場合、案件獲得の責任が伴いますし、必ずしも安定しているとは言いがたい側面もあります。ならば収入の安定が図れて、プライベートな時間や長期休暇も取りやすい組織内弁護士というスタンスも悪くない、と考えるようになったのです」
組織内弁護士と法務部の不協和音に悩んだ
芦原氏が入社した当時のアフラックには、管理職2名、部員2名体制の法務部があった。とはいえ、「体制としては貧弱さを感じた」と芦原氏は当時を振り返る。社内から法務部が受ける仕事と、法律のプロフェッションである自身が受ける仕事は「別立て」がいいと考えた芦原氏は、まずは法務部が企業内の各部署と並列な立場で機能していくことを提案。自らは副法律顧問として、組織内弁護士のキャリアをスタートした。
「法務部を充実させるには、弁護士を何人か採用して、『法務部としての基盤』を作ることが一番だと考えていました。日本人弁護士は私が第一号ですが、翌年にはもう1人を採用し、数年で都合4名の組織内弁護士を抱える体制ができました。安心した私は、社の薦めもあり、後を任せてアメリカに留学したわけです」
一度は完成したと思った『理想の法務部』だったが、アメリカから帰国した芦原氏を待っていたのは、法務部員が、組織内弁護士の完全な脇役になっていたことからくる部内の不協和音。契約書の確認や、保険金の支払いをめぐるトラブル処理といった業務に、突発的・断片的に関わる部員にとって、業務は受身的な作業となり、責任の所在やその後の経緯が見えない不透明なものになっていた。折りしも2人の弁護士が退職することになり、部員にかかる比重が必然的に大きくなるという事態に直面する。芦原氏は、すぐさま「どうしたら部員の仕事の効率を上げられるか」「部員の能力を高めるためにはどうすればいいのか」に、取り組んだ。 ...(以下略)