改正弁護士法以降、弁護士の新しい働き方として注目されているインハウスロイヤー。ビジネスの第一線で働く面白さや、具体的な業務内容、今後の展望等を通じて、インハウスで働く魅力や醍醐味を紹介していきます。
2007年4月、福岡銀行(本社・
福岡市)と熊本ファミリー銀行(本社・
熊本市)が経営統合し設立されたふ
くおかフィナンシャルグループ。同年10月には親和銀行(本社・佐世保市)
も加わり、3銀行を傘下に収める地
域金融機関初の銀行持株会社が誕生
するという大規模な再編劇となった。
この3行はそれぞれ同様の事務部門
を抱えており、目下その整理統合作
業が進められている。そのプロジェ
クトチームの一員として、また同行
初の組織内弁護士として活躍してい
るのが竹山智穂氏だ。
「銀行特有の複雑な規制をクリアしな
がら進める必要があります。やろう
としていることの何が問題になるの
かという論点を抽出するところから
始めなければなりません。そのうえ
で、想定されるリスクやベネフィッ
トを整理し、方向性を誤らないよう
に優先順位づけをして経営判断を仰
ぐといった作業を行っています」
竹山氏は、もっぱらプロジェクト
メンバーから持ち込まれる法的な相
談への対応を担当。「弁護士という
より、ベテランの法務スタッフ」と
自身の仕事内容を表現する。判断す
べき事項にはグレーゾーンもあり、
営業上の意向や人事の問題なども複
雑に絡み合う。組織内のコンセンサ
スがスムーズに得られるとは限らな
いが、そこをどのように調整、交渉
しながら進めていくかが腕の見せど
ころだ。
「状況が漠然としている段階で論点
を抽出・整理するのは、一般の社員
には難しく、弁護士としてのリテラ
シーが生かせていると思います。論
点が見えた時に、結論はこうだろう
といった鼻も利きますし。私が入社
して、業務のスピードが加速したと
評価していただいています。それ以
外にも、各分野の弁護士の紹介を頼
まれるなど、何かと重宝されている
のではないでしょうか(笑)」
企業倒産事案を担当その面白さに目覚める
竹山氏は、東京の大手法律事務所
でそのキャリアをスタート。その直
後に発生した大型の破産管財事件や
会社更生・民事再生事件を、先輩弁
護士を補佐する形で担当した。債権
者である銀行側の代理人を務めた
が、手続きが開始されるまでの紆余
曲折を経験する。
「裁判所や監督委員、債務者側・債
権者側の代理人といった役者がそろ
うなか、時の経済情勢や金融政策な
どが書面に色濃く反映される。不謹
慎かもしれませんが、企業倒産の事
案はすごく面白い、と思いました」
2年後、結婚とともに福岡に転居。
主に企業倒産を手がける法律事務所
に転じる。その事務所が、産業再生
機構(IRCJ)の支援先となった
ある企業の子会社整理を依頼され
た。この事案に参加した竹山氏は、
その間にも同時並行的にほかの再建
型倒産事件にも関与。経営者は民事
再生を主張し、会社の再建にこだ
わっていた。従業員のことを考えれ
ば再生すべきとも考えたが、経営状
況からその見込みは乏しく、破産処
理して債権者に少しでも返済するし
かない状況だったのだ。
「このとき、自分にもっと経営や財
務会計の知識があればさらに力にな
れたかもしれない、と思ったのです。
弁護士だからといって法的な手続き
だけやっていればいいのではない、
経営者に説得力のあるアドバイスが
できなければならないと」
こうしてIRCJの支援を受ける
側の立場を経験した竹山氏は、IR
CJの業務の密度の濃さを実感。「こ
こに入れば鍛えられるだろう」と考
えた。IRCJは時限的組織、存続
期間が限られていたこともあり、夫
の応援も得て単身赴任でIRCJへ
転職した。そこでダイエーやカネボ
ウなど注目を集めた事案を含め、6、
7件を担当する。
「周囲には、弁護士のほかに会計士、
証券会社出身のアナリストやコンサ
ルタントなどのさまざまなプロ
フェッショナルがいて、お互いに知
恵を出し合い、吸収し合っていまし
た。まさにオン・ザ・ジョブで深く
学ぶことができたのです」...(以下略)