「あの法律事務所はどんな事務所?」意外と知らない「働く場」としての法律事務所を、編集部があなたに代わって取材します。編集が見たオフィスのこだわりや工夫もご紹介。
「映像、演劇、出版などジャンルを問わずアートやエンターテインメント作品が好きです。こうした作品を作り出す場を法律家として支援していきたいというのが、事務所設立の目的です」と語るのは、骨董通り法律事務所の設立者の一人である福井健策弁護士(45期)。南青山でも特にハイセンスで人気の高い通りをその名称の由来とする同事務所では、エンターテインメント・アート界の契約交渉、紛争処理および著作権などの知的財産権に関する相談などが取り扱い業務の8割を占める。「中でも契約業務、特に欧米を相手にした契約交渉が多いです。次いで、著作権に関する企画や紛争の相談が続きます。ただしこれらはかなり重複します。例えば、ハリウッドとの契約交渉は、必ず著作権をめぐる戦いになりますから」(福井弁護士)
日本のマンガや小説の海外での映画化、海外アーティストのライブやイベントなど対外的な契約に関する国内企業からの依頼が多いが、近年は完全にドメスティックな案件も増えている。「この業界では、契約や法律をビジネスに持ち込むことを敬遠する傾向にありましたが、そうした法意識が変化してきています」(福井弁護士)
このように、業界は特化しているもののエンターテインメント・アートロイヤーの業務範囲は広いのが特徴だ。「契約や倒産処理といった企業法務から一般民事まで、業務が多岐にわたるため、ゼネラリストであることが求められています」(北澤弁護士 53期)
また、同事務所では作品や製作現場を尊重しており、作品のサルベージというのも重要な仕事の一つである。「10社で共同製作した映像作品があるとして、そのうち1社の経営が破たんした場合、作品の利用が害される可能性もある。その際は作品を救うことに最善を尽くすよう努力します」(福井弁護士)
さらに、作品や業界の主要プレーヤーはもちろん、特有の業界用語や慣習、ビジネスの進め方を知ることも重要である。「法律のためでなく、面白い作品をつくり出すためにアドバイスする。契約に関する相談でも、法律家が理解しやすいように業界用語を法律用語に翻訳すれば、そこでそぎ落ちてしまう大事な要素があったりします。私たちは業界事情を十分に理解した上で、現場に最も即したアドバイスができるよう意識しています」(福井弁護士)
一方、同事務所では他業界の企業法務や紛争処理も取り扱っており、今後も幅広い分野に力を入れていく方針だ。「現に情報問題やファイナンスに強いメンバーもいますし、業務は多岐にわたりますから各分野に精通している弁護士がいた方が組織としても強い。事務所の適正規模、各弁護士のキャリアの幅などを考慮すれば、取り扱い案件には広がりがあった方がいいと思っています。その中で、自分たちの好きなことや面白いと思うことをやりながら、社会にとって、ちょっとは役に立つことをやっていけたら…」と福井弁護士
は今後の展望を語ってくれた。