経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。
コンシューマー向けコンピューターからITインフラまで広範に事業を展開する富士通株式会社。数百のグループ企業を擁する巨大な事業体でもある。この大企業で法務はどういう役割を果たしているのだろうか。ビジネス法務部 統括部長代理の小原英資氏が取材に応じてくださった。
「法務本部の組織は、株主総会・取締役会運営や社内規定の管理・コンプライアンスなどを所管する『コーポレート法務部』と、ビジネスサポート全般を担当する『ビジネス法務部』の二つから構成されており、二つの部が連携しながら日々の業務を行っています。二つの部はほぼ同じ人数で、総勢90名超。私が所属するビジネス法務部は、各部門からの法律相談、契約審査、紛争処理、事業再編まで幅広く担当し、グループ企業に対するサポートも多数行っています。担当する契約審査だけでも年間数千件に及び、たいへん忙しい部門です」
ビジネス法務部では、その忙しい業務に対し、ある強い『こだわり』を持って取り組んでいる。
「社内には、事業分野ごとに事業部門があるほか、海外ビジネスや管理部門等の多数の組織があります。ビジネス法務部では、部を複数のチームに分け、おのおのにサポートする組織を割り振っています。業務の特徴を一つ挙げるとすれば、現場と事実に対する強いこだわりです。日々の業務を通じての法的サポートも非常に重要ですが、ビジネス部門とのコミュニケーションから入手できるさまざまな情報に法的観点を加えて、社内で問題提起をし、経営改善に生かしていくことも法務のミッションです。そのためには正確な事実認識が必要となりますので、現場主義を貫き、事実に徹底的にこだわることを指針としています。特にトラブル対応の際は、この点が顕著に現れ、臨床的な対処にとどまらず、将来の再発防止、経営改善につなげることを強く意識します。一例ですが、システムトラブル対応で法務の視点から技術部門と異なる問題整理ができることがあります。『いつ誰から誰にどんな連絡が行われたか』など事実にこだわって突きつめていくと、その過程において『所定の手順を踏
んだか』『作業環境に問題がなかったか』など、ときに技術以前の課題が顕在化します。これらの課題を再発防止策に生かし、経営改善につなげていくのです」
そんなビジネス法務部において、あえて課題や今後の問題点を挙げるとすれば、どのような点になるだろうか。
「グローバルに会社の活動範囲が拡大しており、技術的な進歩も激しい業界なので、未知の法的な問題に遭遇することが増えていると思います。事前のリスク回避のためにも、もっと視野を広くもって、積極的に外に出て、情報収集を図っていきたいと考えています。自主的な情報収集が重要であることは言うまでもありませんし、同業他社との情報交換も強化していく必要があると感じています。もう一点挙げれば内部での人的交流も課題ですね。法務部員の海外派遣やグループ企業からの研修生の受け入れを行っていますが、もっとこれらの機会を活用し、人的交流を積極的に推進したいところです。他部門を知る、経営の一端を見ることは個人のスキルアップと同時に組織のボトムアップにつながりますし、リーガルネットワークを充実させていくことにもなると思います」
ビジネスロイヤーの今を紹介
森山 敦 第二東京弁護士会・57期
私は司法修習を経て、すぐ富士通に入社しました。「働きやすい環境」を考えたとき、自分にとって法律事務所も企業法務も同じライン上にあって、インハウスに対する抵抗はありませんでした。学生時代からコンピューターに強い関心を持っていたことも入社動機の一つです。入社6年目の現在は、チームの一員として自治体や病院関連業務を担当していますが、弁護士として機能する場面もあり、法律の専門家としてチームの枠を超えて参加する案件や、ときには訴訟も担当しています。システム開発にかかわる訴訟は分かりづらいといわれますが、中にいてビジネスの現場や判例などを見ていると、訴訟になりやすいケースや問題のポイントがよく分かる。有益な知識が得られていると思います。また契約書に落とす際にも最新の技術トレンドと法律を合致させる点に面白さを感じています。