弁護士・法務の転職|バックナンバーのご案内


経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

監査法人の法務業務には、内・外に向けた2種類がある

 151カ国に16万人以上のスタッフを擁する会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(以下PWC)。そのメンバーファーム「あらた監査法人」は、日本の四大監査法人の一つと称される。巨大監査法人の特殊性や、そこで行われる法務業務を法務グループリーダーの大野功氏が説明してくださった。
 「監査法人の法務には『内・外』二つの業務があります。一般企業の法務と同様に法人内部の案件を処理するほかに、もう一方で外部クライアントへのサービス提供に伴う、さまざまな法務問題への対応を行うのです。クライアントサービスに伴うリスク対応は、日常的にはリスク管理グループが担当していますが、法的対応を要する可能性があるもの、リスクが高いと判断された事案について、リスク管理グループと連携して対応しています」
 法務グループが担当する業務について、さらに詳しく説明していただく。
 「所管業務のなかで大きなウエートを占めるものの一つが契約書レビューです。クライアントとの契約が、機密保持契約やホールドハームレスレター、覚書といった付随する契約も含めて年間約3000件あって、そのほか賃貸借契約など一般的な契約がおよそ1000件。クライアントとの契約書は基本的に日本公認会計士協会のひな型をベースとし、またアメリカの監査基準や国際会計基準に基づくサービスにはPWCの英文書式を使用します。ひな型があるといっても種類は100種類以上。クライアントの各種要望を受け和文・英文でモディファイするので仕事量は膨大です。また当監査法人の特徴に、内部からの相談案件が多いことがあります。公認会計士という職業柄から、リスクやコンプライアンスに対する意識が高く、『何かあったらまず法務やリスク管理に相談する』アクションが定着しているのですね。そのなかには人事・労務や知的財産、広報、個人情報など、いわば法律よろず相談も含まれます。またPWCのメンバーファームとして求められる高度な基準への対応もあります。マネーロンダリングや不正競争防止、贈収賄などに関する厳格な規程を作成し、内部徹底を図る役割です。さらに一般企業の株主総会にあたる社員総会や監視委員会などガバナンスの事務局機能も担っています」

監査法人が法務組織にインハウスロイヤーを置く理由

 そんな法務グループが2007年、弁護士を迎え入れた。その背景には、どんな事情があったのか。
 「監査法人としての公共性の高さから、判断した“結果”の妥当性だけではなく、その“プロセス”における透明性も重視しています。そのため業務の各段階で、必要に応じて外部の大手法律事務所のアドバイスを仰ぎながら判断に万全を期するのですが、監査という特殊な業務において発生する事案を、外部の法律家に説明するには、独特の難しさがあります。外部法律事務所の知識や能力をフルに引き出しつつ、事案を効率的にハンドルするためには、監査法人の業務を内側から理解している弁護士が必要でした」
  採用した弁護士の仕事ぶりをどう評価しているのだろうか。
 「法務グループに初めて採用した弁護士は、監査法人という特殊な業務における法務問題を私と協力しながら適切にハンドリングしています。さらにほか2名のメンバーと契約関係業務や各種の法律相談も担当。その仕事ぶりを見て実に優秀だと感心しています。法的知識が豊富だということはもちろん、案件のポイントを的確につかみ、速やかに処理する。リーダーの私は、監査などのクライアントサービスも兼務しているため、留守にすることも多いのですが、法務グループがいつも和やかなのは、彼女の明るい性格や存在が大きく影響していると感じています」
 その法務グループを、リーダーはこれからどう導いていくのだろうか。
 「あらた監査法人が2006年に業務を開始し、わずか3年でここまでに成長した背景には『会計不祥事を二度と起こさない』という強い決意を持った運営への信頼があると思います。企業に内部統制をアドバイスする集団ですから、倫理観やコンプライアンス意識の素地はもともと高い。法務グループはこの組織にあって、より高い意識で『ゲートキーパー』の役割を果たしたいと思います。わが国で最高の品質を持った監査法人を確立し、また、サービスを依頼する企業経営者が『あらた監査法人の監査を受けている』ことをプライドに感じていただけるような、そして同時にクライアントの健全なる成長に資するバリューを提供できるように、約2000名のプロフェッショナル集団を強力にサポートしていきたいと思っています」

プロフィール

大野功 おおの・いさお
あらた監査法人
代表社員、公認会計士
法務グループリーダー
1986年 慶應義塾大学経済学部 卒業
青山監査法人 入所
2000年
2000年
合併により中央青山監査法人に
あらた監査法人 入所
※代表社員…監査法人では法人に出資して経営に参画する人を社員と呼び、そのなかで代表権を持つのが代表社員である
あらた監査法人
設立:2006年6月
代表者:代表執行役 初川浩司
人員:1,959 人
所在地(東京事務所):〒104-0061 東京都中央区銀座8-21-1
住友不動産汐留浜離宮ビル
※ 2009年11月末現在
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