「あの法律事務所はどんな事務所?」意外と知らない「働く場」としての法律事務所を、編集部があなたに代わって取材します。編集が見たオフィスのこだわりや工夫もご紹介。
内田・鮫島法律事務所は、技術法務に特化し、弁護士7名のうち、5名が大手企業での研究開発やシステムエンジニアリングなどの経験を持つ。代表の一人、鮫島正洋弁護士(51期)は、「工学部出身で金属材料の開発に従事した後、弁護士の道に進んだ私と、米『Science』誌を定期購読するほどの技術好きだった内田公志弁護士(38期)が前事務所で出会い、当時なかった技術系企業向けのサービスに特化した法律事務所を作ろうと意気投合したのがはじまりです」と事務所の成り立ちを語る。
設立以降、同事務所では大企業での技術職経験を重視した弁護士採用を行い、現在はIT、エレクトロニクス、化学工学、材料工学分野の専門知識を持つ弁護士がそろう。「こうした採用方針を掲げ、事務所全体で技術法務に特化しているのは、全国でもオンリーワンでしょう」(鮫島弁護士)
主要クライアントは何らかの技術を持つテクノロジー・カンパニーで、全体の7、8割を占める。メーカーを中心とする大企業、物づくり系やITサービス系の中小・ベンチャー企業などだ。「メーカー系の大企業からは知財訴訟を中心に訴訟案件の依頼が多く、最近では特許の鑑定意見書の作成依頼も増加。特許案件を強みの一つとする当事務所の特徴が広く認知されてきていると感じうれしい傾向です」(鮫島弁護士)
中小・ベンチャー企業からは知財戦略の立案とこれに続く事業化の交渉・契約書作成などの依頼が増加。この分野は同事務所が特に力を入れており、企業の経営戦略に基づき、リーガルの見地からアドバイスをしている。「たとえば、技術を商品化・実用化するために、相手先の大企業に対してどのような条件を提示するか、顧客の財務など経営的事項を見据えつつアドバイスすることもあります。弁護士が経営戦略まで踏み込むのは、まだ違和感を覚える国内企業も多いのが実情ですが、海外では広く行われています。インターネットの普及で一般的なリーガル情報であれば容易に入手できる時代。だからこそ、その企業の経営戦略との整合性まで検討した提案が求められはじめています。コンサルティング会社と異なるのは、交渉結果を契約書にまとめたり、訴訟になった場合の結果を見据えてアドバイスをしたりなどの弁護士にしかできない実務を行える点。技術を企業の事業競争力や収益へと換えるサポートをトータルに行うのが特徴です」(鮫島弁護士)
同事務所には、ベンチャー企業の経営者や研究開発者が、革新的なテクノロジーを携えて相談に訪れる。「先日も、今までにないコンパクトかつ、簡単な仕組みで発生させたオゾン気流によって、劇的な脱臭効果を作り出す技術を開発した研究者から相談を受けました。元技術屋ですからこうした技術がどれほどすごいかは直感でわかる。けれども、中小企業であれば財政面の問題から、大企業であれば経営陣の説得・調整に時間を要し、優れた技術が日の目を見ずに埋もれ去っていくことが多いのも事実です。私たちは、リーガル面から革新的な技術の保護・事業化をサポートし、低迷している日本の競争力を高めていくことに貢献していきたいと思っています」と鮫島弁護士は力強く語ってくれた。