「あの法律事務所はどんな事務所?」意外と知らない「働く場」としての法律事務所を、編集部があなたに代わって取材します。編集が見たオフィスのこだわりや工夫もご紹介。
東京パブリック法律事務所(以下、東パブ)は、さまざまな公益活動への取り組みを目指し、東京弁護士会が設立した都市型公設事務所の第1号。主な役割は「市民の法的駆け込み寺」「弁護士過疎地の解消」「弁護士任官推進」である。これまでに各地へ送りだした弁護士は延べ18人。任期を終えて東パブに戻り、後進育成にあたる者もいれば、独立する者もいる。独立した弁護士は協力弁護士として、東パブの公益活動をサポートする。「短期間で一人前になれる」といわれる東パブ。なぜそれが可能なのか、所長の中城重光氏に伺った。
「やはり柱の一つである弁護士の過疎地派遣と、その支援システムが整っているからでしょう。司法過疎地に派遣された者は、赴任早々、実務に忙殺されます。市長や地元名士の方々と肩を並べて仕事もします。場数を踏む分、度胸がつきますから、一人前になるのも早いのです。新人は、赴任前にマンツーマンで支援(指導)を受け、先輩の赴任地へ研修に行き、実務を体得します。採用面接に同席して人事労務を、事務所の財務状況などを共有する会議に出席し、経営感覚を身につけます。赴任後は、過疎地サミット※1や過疎地巡業※2などを実施し、赴任した彼らの不安解消に役立てています。それは彼らに市民の役に立つ弁護活動をしてもらうためであり、究極的には背後にいる市民を大切にしたいという思いで行っているものです」
「すべての市民に法的サービスを提供するため」には何が必要か。東パブの弁護士は皆、自分なりの答えを持っている。山下敏雅弁護士(56期)も次のように語る。
「公設の利点は、公的機関につながりやすいこと。ある弁護士は、役所の高齢介護課などへ出掛けて勉強会や相談会を提案し、行政を巻き込んで、困っている人に近づく仕組みを作りました。私の場合は児童虐待について豊島区内の関係機関と連携を重ね、区長から子ども権利擁護委員に委嘱されています。地域の税理士・司法書士など他の8士業と協力し、自治体の共催を得た『事業と暮らしの相談会』という、区民の相談にチームで対応する仕組みもあります。役所を訪ね、初めて法律事務所にたどりつく、そんなギリギリの状態にある市民のために、どうしたら弁護士が役に立てるか、近づけるか。その方法を各自が模索し、実現しています。法的アクセス障害の解消という専門分野の弁護士が集うのが、東パブです」
過疎地赴任の活動も軌道に乗り、ОBОGの協力弁護士も増えた。今後の取り組みについて、中城氏に尋ねた。
「弁護士任官の推進に一層力を入れたいと考えます。拡充的意味合いで裁判官を弁護士として2年間受け入れる制度を利用して、二人の裁判官が当事務所に来ました。彼らが弁護士として得た経験─例えば被告人の更生のため環境調整や身元引き受けを行ったり─の貴重さはいうまでもありませんが、彼らが私たちに与えた影響の大きさもまた、計り知れません。裁判官と共に働く機会を得た弁護士が、赴任先で経験を積み、戻った後に弁護士任官を目指す。いわば弁護士任官のフルコースを完成させることが、今後の目標です」(中城氏)