都道府県ベースの人口比で3番目の多さという豊かな会員弁護士を擁しながらも、著しい府内偏在という課題を抱える京都弁護士会。司法制度改革が進みつつある今、「弁護士自身の意識改革が求められている」と力説する石川会長に、今後の活動方針についてうかがった。
弁護士の状況から述べると、京都府の人口約264万人に対して、当会の会員数は424人。この人数は他会と比べ、恵まれているといえるでしょう。しかしながら、うち402人は京都市内で開業しています。京都市の人口は約147万人なので、弁護士数の割合は京都市内が約3600人に1人と潤沢であるのに対し、市外は約5万3000人に1人という過疎の状態。14倍という偏在度は、すべての市民に法的サービスを行き渡らせるうえで、深刻な状況であると言わざるを得ません。司法改革を推進していくうえでも、この状況を看過することはできないのです。
私は会長就任早々、府下26の市町村すべてを回り、各首長から意見を得たのですが、皆さん「弁護士が足りない」と訴えておられました。地域で何か法的な問題があれば、首長自ら数時間かけて京都市まで足を運ばなくてはならないと。こうした問題について、当会では99年より北部、中部、南部それぞれに法律相談センターを、さらに北部と中部には2カ所ずつ、南部にも1カ所の公設法律事務所を設置して、改善を図ってきました。が、それでも不足。
そこで本年度中には、舞鶴と福知山にも法律相談センターを新設し、地元の会員に加えて、京都市内の会員が交代で応援出張してもらおうと考えているところです。そこには、地方の状況に接することで、地域における持続的なリーガルサービスの必要性を実感してもらえるきっかけとなれば、との思いがあります。と同時に、紛争解決の拠点となる裁判所の整備も行う必要があるでしょう。北部地域(旧峰山町・現京丹後市)における地方裁判所支部の復活と南部地域における支部新設についても、目下の急務となっています。
「市民のための裁判員制度」成功に向けて
市民の手による、市民のための刑事司法を実現させるためにも、被疑者国選弁護制度の対象拡大と裁判員裁判制度は、是が非でも成功させなくてはなりません。
被疑者国選弁護制度の実現には、被疑者段階から被疑者の人権を擁護して適正な刑事手続を確保するための充実した弁護活動が必要不可欠。そのためには、会内に約300人の受任弁護士が必要になると思われますが、現在受任を表明してくれている会員は約260人。引き続き、自発的な参加を呼びかけながら、会員の使命感に期待しているところです。
また、従来の刑事裁判のようなやり方のまま裁判員裁判制度をスタートさせても、適正で公平な結論を導き出すことは、明らかに困難です。証人尋問などの法廷での審理を中心にするとか、捜査段階の取調べを全面的可視化・ビデオ録画するなどの改革が絶対必要になります。
一方、当制度に対する市民の理解は、模擬裁判を重ねていくうち、模擬裁判員として参加された方を中心に、相当深まってきたと思います。ただ、いまだ市民の間には、「重大な犯罪などに、できればかかわりたくない」という声が根強く残っているのも事実。そうした市民に適正な判断をしてもらえるだけの材料をどこまで弁護士がうまく提供できるか、訴えかけることができるかが問われるのです。そこに弁護士は全力を注ぎ、裁判官と対等に議論してもらうことの大切さを市民に訴える必要があると考えています。
そこで当会では、この制度について、もっと具体的に、わかりやすく市民にPRしようと、毎年恒例の市民向けイベント「憲法と人権を考える集い」を内容・規模ともに拡大。京都市内のみならず、府下各地でサテライトイベントを開催します。メインは、来る11月29日に行う京都駅ビル大階段広場でのイベント。裁判員裁判の疑似体験コーナーやパネル展示、狂言上演、ライブステージ、クイズ大会などを通じて広く市民の理解を求めます。さらに当日の模様はKBS京都テレビ、ラジオでライブ中継し、その翌日は司法特別番組もテレビ放映。京都駅は地域利用客ばかりでなく、全国各地から多くの人たちが行き交う場所ですから、注目されること請け合いです。大きな反響が得られることを期待します。
「京都議定書」採択の地。避けて通れない環境問題
さて、「環境」をテーマに活動指針を掲げる単位会は、当会だけではないでしょうか。ご存じのとおり、京都は「京都議定書」が定められた地であり、今年はそこで約束した温室効果ガス削減目標の対象期間始まりの年。この夏には洞爺湖サミットも開かれ、新たな取り組みもスタートしました。
そして京都弁護士会もまた、「未来のために、豊かな環境を守るための取り組み」を強化するとともに、環境への負荷を管理・低減するためのKES(環境マネジメントシステム)認証を取得。会内においては光熱水費の2割削減、コピーは両面・縮小するなどして、その成果を上げているところです。さらに、この地球温暖化対策を実践するため、会員の各事務所・家庭などへも広く呼び掛けたところ、日弁連も環境マネジメントシステムに取り組むことになりました。引き続き、同運動を推進し、他会にも広く波及してくれれば、と思っています。
それともう一つ、市民に対して弁護士の存在をもっと身近に考えてもらえるような活動にも力を入れています。たとえば、学校や公民館など市民が集う場へ我々が出張し法律教室を開催したり、自治体や商工会を通して顧問弁護士などの活用法を自治体や事業者に提案するといった「弁護士活用プログラム」を作成中です。市民に弁護士の仕事を理解してもらいながら、その活動領域を広げていきます。なぜなら、弁護士は決して“高嶺の花”であってはならず、使われるために存在するのですから。
最後に、ここで挙げた取り組みは、いずれも我々弁護士自身の意識改革でもあります。会員の皆さんの理解と協力を得て推進していきます。