高度成長期以来、ベッドタウンとして発展を遂げてきた多摩地域。26市3町1村を擁し、人口は東京都全体の3分の1を占める約413万人と、福岡県に次いで全国10番目の規模を誇っている。その多摩地域の住民の法的ニーズに応えるべく誕生したのが、東京三弁護士会多摩支部だ。今回は支部長を務める小林氏、山本氏、山﨑氏に支部発足の背景や活動内容、今後の課題を伺った。
「当支部の源流は、昭和20年代に発足した三多摩弁護士クラブです。任意団体として活動していましたが、公の団体である『支部』という看板がないと対外的にまとまった発言もできませんし、市民へのリーガルサービスを広げることができない。そこで支部設立に向け、クラブ内に機構改革検討委員会が立ち上がったわけです。それが1989年のことです。当時の多摩地域の人口は380万人。地裁八王子支部の民事事件数が全国5・6位、刑事事件数は6・7位、家裁八王子支部の家事事件数は4位と、法的需要が増えていたという客観情勢も大きく影響していました。
その後、さまざまな紆余曲折を経て、1998年に東京三弁護士会多摩支部が設立されました。三多摩弁護士クラブでは東京弁護士会(東弁)、第一東京弁護士会(一弁)、第二東京弁護士会(二弁)の三会が一緒になって活動を行ってきたので、多摩地域では一つの合同支部をつくっていきたいという思いがありました。しかし、本会が3つに分かれているため、最終的には各弁護士会の多摩支部という形になり、事実上は多摩支部として一緒に運営していこうという極めて変則的な事態になったわけです。東弁と二弁には正式な多摩支部として会則があり、一弁は弁護士会のなかの一委員会という形で運営されています。支部会員資格は、ほかの弁護士会などでは支部管内に事務所のある人となっていますが、当支部の場合は東京三会に所属していれば事務所も住所もなくても支部会員になれるという決め方をしていますので、東京23区内に事務所のある支部会員もたくさんいます。また、多摩地域に事務所がありながら支部会員になっていない弁護士もいます」(小林氏)
「三会あるということで支部長も3名。これが多摩支部の大きな特徴でしょう。日常的な運営は、支部長と副支部長による正副支部長会議を月2回開催。東弁と二弁の支部総会を定例で年1回、臨時で開くこともあります。また、正副支部長会議の議長などを担当する当番会を三会の持ち回りで実施しています。現在13の委員会がありますが、一部の会員に会務が集中しているのが悩みです。23区内の先生方の協力にも随分助けられています。公益活動を義務化しようかという声もありますが、具体的な検討はまだまだ先。議論として会員資格自体をどうするか、今のままでは問題が多いのではないか、という提言が行われている段階です」(山本氏)
多摩支部として三会が一体となった活動が、市民・自治体から好評
「市民向けサービスとしては、多摩支部として三会が一体になって活動しています。最近は法律相談が盛況で、立川市と八王子市の法律相談センターでは、一般事件のほか専門相談としてクレサラと高齢者、DV問題を扱っています。また町田では、一弁が新たに法律相談センターを開設しました。さらに、15自治体と9社会福祉協議会の無料法律相談に弁護士を派遣しています。三会に分かれていない一つの窓口で対応しているため、自治体も地域の弁護士として非常に頼りにしてくださっていると感じています。このほか、市民向けの法律講座を毎年1回開催。今後は、土曜と夜間にも法律相談を開催するなど、さらなるリーガルサービスの拡充を検討しています。
都心だと100人単位のローファームがありますが、多摩地域では規模の大きいところで10~20人程度。こんな案件が多いです、得意ですというのはありますが、渉外事務所、特許専門といったように業務の専門化はなされていません。いろんな依頼者がいますし、何でもやらざるをえないのが現状です。地理的なことを言うと、多摩地域は南北の移動がとても不便で、最南にある町田市の簡易裁判所までは立川市から1時間以上かかります。最近では弁護士の多い立川市、八王子市、武蔵野市以外で事務所を開く人が増えていますが、そんなふうに各地に弁護士が増えていくと市民の大きな手助けになると感じています」(小林氏/山本氏)
長期的な課題は、八王子支部の存置と立川の裁判所の本庁化
「裁判所が八王子市から立川市へ移転したのを機に、この4月に弁護士会多摩支部の会館も立川市に移転しましたが、従来の地裁八王子支部の目の前にある旧支部会館をどうするか、というのが大きな課題です。現在はこの建物に八王子相談センターの機能だけが残されていますが、裁判所支部跡地には簡裁、法務局、税務署の建物が新たにできる予定になっているため、八王子の旧支部会館で登記や土地の問題などを相談したいという方が必ず増えるはず。旧支部会館の利用価値は今後も極めて高いと考えられます。ですから、これを手放さないでほしいと本会に求めています。
それと並行して取り組んでいるのが、『東京地裁立川支部の本庁化』です。行政事件の取り扱いができないなど、事件処理において支部では大きな制約があります。本庁化が実現すれば、制度上、各地裁関連に一つの弁護士会という扱いになっていますので、多摩支部も弁護士本会に格上げになり、より地域に密着したリーガルサービスを行うことができます。せっかく立派な会館ができたので、これを機会に裁判所の本庁化を積極的に推進する活動をしたいと思います。市民向けにはリーフレットを作成して広くPRを行い、多摩地域の自治体も本庁化の決議を上げており、現段階で27市町村と都議会で採択をしてもらっています。また、廃止された地裁八王子支部を復活させることも併せて求めています」(小林氏/山﨑氏)
「本庁化を、というからには弁護士が本来やらなければならないことを多摩地域の弁護士の力だけでやっていく体制が必要です。しかし、被疑者国選弁護では多摩地域の弁護士だけでは対応できないため、本会から応援を頼んでいます。本庁化を目指すためには必然的に私たちの責任が増すことも覚悟しなければなりません。こうした状況にどう対応していくか、支部としての責任をまっとうしながら、課題クリアに向けて全力を尽くしていきたいと思います」(山本氏)