東・南・北の三方を太平洋・津軽海峡に囲まれ、漁業や水産品加工業、海運業が盛んな函館市。幕末、海外に門戸を開いた開港都市という歴史から、旧イギリス領事館や五稜郭公園などの名所・旧跡も多く観光地としての人気が高い。この函館市を中心に北海道南部を管轄している函館弁護士会。その活動や特徴を窪田良弘会長に伺った。
当会は会員39名の全国最小規模の弁護士会ですが、活動地域は私の出身県である熊本県よりやや大きい面積を有しています。本庁が南端の函館市にあるため、北部への移動には苦労しており、降雪時は自動車で片道4〜5時間を要するほど。そのため刑事事件の接見などは一日仕事になりますが、市内にほぼ集中している弁護士が精力的に活動しています。
過疎解消・法サービス充実に向けても熱心に取り組んでおり、2006年秋には函館市の西約75㎞にある江差町に法テラス4号事務所を誘致。現在は2名のスタッフ弁護士がさまざまな相談や事件に熱心に対応してくれています。以前は江差町に当弁護士会の法律相談センターを設けていましたが、4号事務所開設を受けて発展的解消を図り、2011年4月から西端地域の松前と福島エリアに場所を移し、法律相談を始めました。そのほか簡易裁判所・家裁の出張所が置かれている八雲町では定期的に法律相談を実施しています。
顔の見える弁護士会に若手が増え、活動が活発化している
当会の会員数は39名。顔・名前はむろん、互いの性格もほぼ分かる密接な人間関係があります。今年、在職60年表彰を受ける3期から新63期までと年齢の幅はありますが、弁護士会総会や各種会合への出席率が高く、さらに野球部活動やゴルフコンペなどが行われ、年代を超えて親睦を深めています。ここ数年の若手会員の増加は顕著で、60期以降が15名になり、全体の3分の1を超えました。なかには過疎解消に意欲を持ち、他県の弁護士会からの登録換えで来てくれた弁護士もいます。困難な案件に立ち向かう熱意ある若手が増えて、会務や法テラス事件への取り組みも活発化しています。巡回法律相談の対象地区や回数を増やせるようになったのも、その一つの表れです。また会員数が増えたことにより、日弁連から講師を招き、裁判員裁判のための研修などを活発に実施するようになりました。さらに若手の中には、JICA※1の法整備支援プロジェクトに応募して、現在ネパールで法整備支援アドバイザーとして汗を流している会員もおり、若手の活躍は国際的にも広がっています
刑事事件、過疎解消に取り組む若手が活躍できる環境がある
函館で弁護士が扱う事件の件数は、債務整理・破産・離婚など民事・家事事件が圧倒的に多くなっています。しかし小規模弁護士会ゆえ、 刑事事件を扱う機会も、国選・私選ともに相当な件数があって、例えば10 年選手ではせいぜい月に1・2件ですが、熱心な若手だと月に5・6件を受け持つ会員もいます。このままでは、例えば裁判員裁判で、共犯者多数の場合に被疑者一人に対して弁護人が複数人選任されると、国選弁護人候補者が足りなくなるおそれのある状況です。道南地域における弁護士の法的サービスの需要と供給については、会内でも意見が分かれますが、「バリバリ刑事事件をやる人を含めて、50人規模を目指すべき」という意見が有力だと感じています。
まずは震災対応。次に刑事事件と次代の法曹養成に注力
今回の東日本大震災で函館も被災しました。函館駅周辺は朝市で有名な地域も含め、大部分が浸水し、会員の事務所も被害を受けています。弁護士会では4月7日に法律相談窓口を設置し電話相談と同時に弁護士会館での無料相談も実施。以降も継続して無料で法律相談を受けていますが、八雲町・森町などで漁業関係者が受けた被害は市内より深刻で、これらの相談が今後一層増えることも考えられます。また岩手弁護士会からの要請で被災地に弁護士を派遣しました。私も岩手会の若手会員や大阪会のベテラン会員と共に4月12日に被災者避難場所である宮古小学校に行き、相続に関する相談などを受けました。会としては可能な限り、誰かが被災地に出向く相互扶助の精神で、現在も活動を続けています。
今年度の活動は震災対応が第一。地元はもちろん東北地方の要請にもできるだけ応えていきます。二番目には刑事事件への取り組みを掲げ、特に裁判員裁判への対策を強化する予定です。これまでの裁判で「弁護士の説明は、専門用語が多くて内容が分からない」と言われることがありました。私たちの多くは法廷で分かりやすく話をする訓練はしてこなかったわけで、簡潔に短い時間で説明する訓練が必要と感じています。三番目は、修習生や新人弁護士を受け入れる体制整備に努めること。ベテラン会員を中心に、次世代の法曹養成の観点と函館弁護士会の拡充の両面から若手を受け入れ、育てる環境づくりに注力してきましたが、今後も引き続き努力していく考えです。
函館山から見る街並みや、風光明媚(めいび)な自然が語られることの多い函館は、温泉施設も充実していて、有名な湯の川温泉のほか、市内各地に低料金の温泉施設(スーパー銭湯)などがあります。住んでみるとこれもうれしい一面。さらに大都市と比べれば物価・家賃が安くて暮らしやすい上、仕事面でも熱意を持つ若い弁護士に適した環境があります。司法修習で函館に来た私が弁護士キャリア10年※2で会長職を担っているように、若手会員にも積極的に会務を委ねる風土・環境があります。さらに刑事事件で活躍できる土壌もあります。
これからも若手を支援するさまざまな取り組みを進めて、自ら困難に立ち向かい、新たな道を切り開いていくような情熱ある弁護士の登録を歓迎したいと考えています。