「あの法律事務所はどんな事務所?」意外と知らない「働く場」としての法律事務所を、編集部があなたに代わって取材します。編集が見たオフィスのこだわりや工夫もご紹介。
知的財産権、中でも特許権を中心にビジネス訴訟を専門とする全米有数の事務所。東京オフィス代表のライアン・ゴールドスティン氏にその真価を尋ねた。
「最大の特徴は、トライアル(陪審員の前での裁判)に特化していること。アメリカでも、トライアルまで進むケースは全訴訟の約5%です。しかもその5%は、和解等の折り合いがつかない難しい訴訟。これを引き受けるのが、われわれです」
その勝訴率は91.3%を記録するという。また、ITC(米国際貿易委員会)の審議で無敗、過去5年間の調停・判決では150億円以上を獲得するなどの成功も収める。トライアルでの勝訴および、こうした実績が相手方へのプレッシャーとなり、速やかな和解を可能にするケースもある。多くの国内大手企業が海外での訴訟時に同事務所を頼みにするが、その先頭に立つのが、日本企業の訴訟ニーズを熟知し、微妙な意味合いまで読み取るほど日本語が堪能な、ライアン、ウェイン、マーク三弁護士である。
一例に、日本の電子工学メーカーを代理したITCのケースがある。米国輸入者・販売者が販売した1000の侵害品について、11の特許権と31のクレームを主張し、全世界の企業に対して侵害品たるカートリッジすべての輸入と販売を禁じる排除命令をITCから引き出した。知的財産訴訟や独占禁止法にからむ案件などの代理を通じ、様々な企業とコミュニケーションを図り、「訴訟もビジネス戦略の一つ」とアドバイスを行ってきた。ウェイン氏は、こう語る。
「日本企業は資産としての特許を数多く持っているにもかかわらず、それを生かし切れていない。せっかくの権利を、直接の利益のみならず、公正で競争力のある市場づくりのためにも、もっと活用すべきです」
同事務所が特化するトライアルは、大概が難局であり、相当な集中力や明敏さが要求される。
「陪審トライアルと裁判官トライアルでは、弁護士としての戦略は異なりますが、特に前者では心理学をベースに、陪審員の関心をこちら側に引き寄せるためのスピーチ構成、理解されやすい言葉の選び方に配慮します。下準備の一つとして模擬裁判を実施し、その中でクライアントに有利な議論の進め方やポイントを探り出します」
同事務所の新人弁護士は、トレーニングの一環として必ず、模擬裁判を経験する。その様子を映像で記録し、スピーチ、目の配り方、挙措など、自身を客観的に見るための訓練を行うという。民事・刑事の違いはあれ、裁判員裁判に直面する日本の弁護士にとっても、こうした同事務所の裁判への臨み方は、「勝てる弁護士になるためのヒント」となるのではないか。
同事務所が関与する案件は、一人で立ち向かえる規模ではない。ゆえに国内外の拠点をまたいだチームワークが醸成されていると、ライアン氏。また二人は、「当事務所では『マイ・クライアント』という表現は厳禁です。個人的に仕事をするのではなく、チームで仕事をする点が素晴らしい。目的を共有し、その達成のためにまい進できる優秀な仲間と一緒に働ける幸せを感じています」と語る。
勝訴にこだわり抜くための精神的・肉体的なタフネスを備えた弁護士たち。その支えの一つが強いフレンドシップなのだ。